米航空宇宙局(NASA)は、小惑星に宇宙船を衝突させ小惑星の軌道を変えることを目指した人類初の地球防衛実験を試みました。
9月27日午前8時14分、DART(二重小惑星軌道変更実験)の宇宙船を地球から1080万キロメートル離れた宇宙空間で直径160メートルの小惑星ディモルフォスに衝突させ小惑星の中心から約17メートル離れた地点に衝突したと明らかにしました。
NASAは今後、地上及び宇宙望遠鏡観測を通じて、軌道が実際に変更されたかを確認する予定だそうです。
小惑星衝突実験は、未来に起きるかもしれない小惑星の衝突を事前に防止するための地球防衛プログラムの一環として企画されました。
昨年11月に地球を出発したDART宇宙船(550キログラム)はこの日、衝突の4時間前にディモルフォスと9万キロメートル離れた地点で最後の飛行経路調整を実施した後、自動航法システムを利用して目標地点に向かいました。
衝突の2分30秒前にはイオンエンジンを消し、慣性で小惑星ディモルフォスに向かい突進し衝突した瞬間の速度は秒速6.1キロメートルで音速の18倍だったという事です。
DART宇宙船に搭載されたカメラは衝突の3秒前まで小惑星を撮影して地球に送られてきました。
衝突後の状況は7日前に分離されたキューブサット「LICIAcube」が撮影任務を受け持ったという事です。
イタリア宇宙局が製作した重量14キロのLICIAcubeは、ディモルフォスから55キロメートル離れた地点で衝突の3分後からカメラを作動させLICIAcubeが撮った最初の写真は衝突後24時間以内に確認できるとNASAは明らかにしました。
初の地球防衛実験の対象となった小惑星ディモルフォスは、直径780メートルの小惑星ディディモスから1.2キロメートル離れて11時間55分の周期で公転する二重小惑星系の小さな惑星です。
NASAは衝突の衝撃でディモルフォスの公転軌道がやや内側に変わり、公転周期が最大で10分短縮できると予想しています。
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NASAの予測によると、DARTが小惑星に衝突すると100億ジュールの運動エネルギーが発生し その結果、衝突噴火口が作られ、宇宙船の質量の10~100倍に相当する物質が噴出すると予測し 予測通りならば約100トンの岩石物質がこなごなに散らばり、ディモルフォスに幅10メートルの衝突口が生じるという事です。
この物質を押し出すのに必要な力は、ちょうど反対方向に小惑星を押し出す力として作用するためロケットの推進原理に似ているという事です。
問題は、衝撃の強さを左右するディモルフォスの表面がどれほど硬いのかがわからないことだそうです。
小惑星が硬い岩だということを前提に、宇宙で巨大なビリヤードゲームをしているとし「これは基本的に簡単な物理学の方程式で解決できるが、実際には当てはまらない場合が非常に多く起こっている」という事です。
実際に米国と日本の探査船が訪れた小惑星リュウグとベヌは、当初の予想より表面が硬くなかったという事です。
岩石よりも強度が弱い場合、衝突の結果を予測するのははるかに困難になり小惑星の表面が柔らかいほど、衝撃の余波が長くなり衝突口が大きくなるという事です。
NASAは今後、4つの地上天文台とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、ハッブル宇宙望遠鏡を通じてDARTの軌道の変化を観測する計画だという事です。
ディモルフォスがディディモスの前を通過したときの光が、以前と比べてどのように変化したかを比較し分析する方法を用いるという事です。
欧州宇宙局は、今回の実験がどれほど成功したかを調べるために、2024年10月にHERAという名の探査船をここに送る計画で2026年末にここに到着し、搭載した高解像度カメラと2台のキューブサットで、2つの天体にどんな変化があったのか、2つの惑星の物質は具体的にどんな成分なのかを調べる予定だそうです。