無罪判決の舞台裏
「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県の資産家男性を殺害したとして、殺人などの罪に問われていた元妻に対する判決で、和歌山地裁は無罪を言い渡しました。
須藤早貴被告(28)は2018年5月、夫だった野崎幸助さん(当時77)に和歌山県田辺市の自宅で致死量の覚醒剤を摂取させて殺害した罪に問われていました。
これまでの裁判では28人の証人が出廷し、須藤被告が覚醒剤を購入したという証言など多くの証拠が提示されましたが、野崎さん殺害の直接的な証拠は出てきませんでした。
やはり、どうやって覚醒剤を飲ませたのかまで解明しないと、また冤罪者を生んでしまう恐れもありますね。
須藤早貴被告に覚醒剤を売ったとされる密売人は、あれは偽物で氷砂糖だったという証言をしています。
では、野崎幸助さんの体内から検出された覚醒剤は一体どこから入手したものなのでしょうか?
以前、野崎家で働いていた家政婦さんが、2018年6月2日土曜日の午前中に小川氏のインタビューで「(野崎氏から検出された)覚醒剤は、昔付き合っていた人が残していったものを口に入れた」と答えています。
その証言が正しければ、以前から覚醒剤は野崎さんの自宅にあったということになりますね。
今回の判決は、日本では滅多にない「疑わしきは被告人の利益に」という原則が適用されました。
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【▲上記の記事からの続き▼】
袴田さんの冤罪事件があったことから、裁判官も慎重になっているのでしょうね。
こうなると、和歌山カレー事件で自供がなく状況証拠だけで死刑判決を受けた林眞須美死刑囚が無実を訴えていることにも影響が出るかもしれません。
もし林眞須美死刑囚が現在裁判を受けていたら、無罪になっていたかもしれませんね。
逆に須藤早貴が林眞須美死刑囚の時代に裁判を受けていたら、有罪になっていたでしょうね。
須藤早貴被告の判決理由
判決の理由について、裁判長は次のように指摘しています:
- 本件当日、被告が野崎さんを殺害することは可能である
- 覚醒剤を注文し、密売人から覚醒剤様のものを受け取ったのは、殺害を疑わせる事案である
- 死亡当日に1~2階を行き来していたことなど、普段と異なる行動を取っていたと言える
- しかし、被告が受け取った物が覚醒剤とは言い切れない。受け取った覚醒剤の様なものは氷砂糖の可能性が否定できず、間違いなく覚醒剤とは言えない
- 1~2階を行き来していたことなど普段と異なる行動を取っていたが、それをもって直ちに被告が覚醒剤を摂取させたと強く推認することはできない
- 被告の検索履歴を照らしたとしても、罪を推認できないという判断は変わらない
- 被告人以外の第三者による他殺の可能性や、自殺の可能性はないと言えるが、野崎さんが覚醒剤を誤って過剰摂取した可能性はないとは言い切れない
動機について
動機面について、裁判長は次のように指摘しています:
- 野崎さんが死亡すれば億単位の遺産がもらえる、財産目的であるということは動機になりうる
- 離婚届を突きつけられたことについては、本件当時、離婚や資金提供が現実化していたとはいえない
- 野崎さんの死亡で遺産がもらえるとしても、そのこと自体が殺害を強く推認できるわけではない
- 検索履歴で、覚醒剤を注文した際に検索したものがあり、殺害計画をしていなければあり得ないとはいえない。殺害を推認させる行動とはいえない