H2O『想い出がいっぱい』の歌詞に登場する「ガラスの階段」。その意味と、シンデレラの靴の誤訳、社会的な障壁との関係を読み解きます。

ガラスの階段とシンデレラの靴:夢と現実の境界にあるもの
H2Oの名曲『想い出がいっぱい』に登場する「ガラスの階段」という歌詞。 この幻想的なフレーズは、ただ美しいだけでなく、“夢と現実のはざま”を象徴する繊細な比喩です。
ガラスの靴と階段:少女から大人への一歩
「ガラスの靴を履いたシンデレラが、ガラスの階段を降りる」 この描写は、魔法が解ける直前の一瞬。きらめく夢の世界から、現実へと戻る道のりを表しています。
- ガラスの靴:夢、憧れ、特別な時間の象徴。壊れやすく、儚い存在。
- ガラスの階段:その夢から現実へと降りていく繊細な道。少女が大人になる過程の象徴。
この歌詞は、誰もが経験する「もう戻れないけど、確かにそこにあった輝き」をそっと抱きしめるような情景を描いています。
実は誤訳だった!?シンデレラの靴の真実
原作のシンデレラの靴は、実はガラス製ではありませんでした。 シャルル・ペローによるフランス語の原作では、「ヴェール(vair)」という毛皮製の靴が登場します。 しかし「ヴェール(vair)」と「ヴェール(verre=ガラス)」は発音が似ており、英語翻訳の際に誤訳されたのです。
この偶然の翻訳ミスが、「ガラスの靴」というロマンチックなイメージを生み出し、ディズニー映画などで定着しました。 ちなみに、グリム兄弟のバージョンでは金や銀の靴が登場します。
言葉が生む魔法
「ガラスの靴」は翻訳ミスから生まれた偶然の産物。 それでも、その誤訳が世界中の人々の心に残る“魔法”となりました。
そして「ガラスの階段」という歌詞は、その魔法の余韻を感じながら、現実へと歩み出す少女の姿を描いています。 透明で美しく、でも壊れやすい。そんなガラスのイメージが、私たちの記憶や感情をそっと揺らしてくれるのです。
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【▲上記の記事からの続き▼】
ガラスの階段の先にあるもの:見えない壁と天井
「ガラスの階段」は、夢から現実へと降りていく繊細な道。 しかしその先には、「ガラスの天井」「ガラスの壁」「ガラスの地下室」と呼ばれる、見えない社会的な障壁が待っていることもあります。
- ガラスの天井:女性やマイノリティが昇進や成功のチャンスを阻まれる“見えない上限”。
- ガラスの壁:特定の役割に閉じ込められ、他の分野に進めない“横の障壁”。
- ガラスの地下室:低賃金や不安定な労働環境に置かれ、そこから抜け出せない状況。
これらは外からは見えにくいけれど、確かに存在する現実の壁。 「ガラスの靴」を履いて夢を見た少女が、「ガラスの階段」を降りた先で、こうした障壁に直面することもあるのです。
夢と現実の交差点にある問い
『想い出がいっぱい』の歌詞が描くのは、夢の終わりではなく、夢を信じていた頃の自分との別れ。 そしてその先にある現実は、きらめきだけではなく、乗り越えるべき壁も含んでいます。
それでも、ガラスは壊れることもある。 見えない壁も、誰かの一歩や声によって、少しずつひびが入るかもしれません。
「ガラスの階段」を降りるその瞬間に、私たちは何を見て、何を選ぶのか。 それが、夢を過去にするのか、未来につなげるのかを決めるのかもしれません。