タモリステーション「日本人と石油最前線」で話題になった“食品とナフサ”の関係を解説。合成バニリンなど、ナフサ由来の原料が最終製品に残るケースと、加工助剤として除去されるケースの違いを、誤解しやすいポイントとともに分かりやすく整理します。

「食品に“ナフサ”?テレビで知った意外な事実と、正しく理解しておきたいポイント」
◆ はじめに
先日放送された タモリステーション「日本人と石油最前線」 を観ていて、思わず手が止まりました。 番組の中で紹介された「食品にもナフサが関わっている」という話、しかも「バニラアイスに“ナフサ由来の原料”が含まれている」という一言が、どうにも気になったのです。
ナフサといえば、石油から作られる化学製品の原料。プラスチックや合成繊維のイメージが強く、まさか食品の世界にも関わっているとは思っていませんでした。
そこで、番組をきっかけに少し調べてみることにしました。調べてみると、最初に想像していたイメージとは少し違う、もう少し込み入った話だとわかりました。
◆ ナフサが食品と関わる、実はちょっと複雑な道のり
まず整理しておきたいのは、「ナフサ」そのものが食品にそのまま使われているわけではないという点です。
ナフサは原油を蒸留してできる石油製品のひとつで、それ自体はガソリンに似た透明な液体。ここから熱分解によって、エチレン・プロピレン・ベンゼン・トルエンといった「石油化学基礎製品」が作られ、さらにそこから何段階も化学反応を経て、様々な物質へと姿を変えていきます。
食品との接点は、まさにこの「何段階も先」にあります。
代表的なのが、番組でも取り上げられていた合成バニリン(バニラの香り成分)です。バニラアイスなどに使われる香料には、天然バニラ豆から抽出したものだけでなく、化学的に合成されたバニリンもあります。その主流の合成方法は、グアヤコールという物質を原料に作る方法で、このグアヤコールは石油化学由来のベンゼン・トルエン系の物質から作られることがあります。つまり、たどっていくと出発点にナフサがある、という関係です。
ここが今回いちばん伝えたいポイントですが、こうして作られた合成バニリンは、溶剤のように途中で取り除かれるものではなく、香料成分として最終製品にそのまま残ります。
◆ “料理で使う水”とはちょっと違う
以前は「ナフサは水のように、工程で使われて最後には消えてなくなるもの」というイメージで理解していましたが、これは正確ではありませんでした。
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【▲上記の記事からの続き▼】
- 野菜を洗うときに水を使う
- でも最終的にその水は料理の中に残らない
このイメージが当てはまるのは、あくまで食品衛生法上の「加工助剤」に分類される一部の物質の話です。加工助剤とは、たとえば油脂の抽出に使われるヘキサンのように、完成前に食品から除去されることが前提の製造用の溶剤を指し、これに該当するものは表示が免除されます。
一方、合成バニリンのような「ナフサ由来の原料から作られた成分」は、これとは仕組みが違います。除去されるどころか、香りづけという役割を果たすために意図的に食品に残される成分だからです。同じ「ナフサ」という言葉が出てきても、
- ① 製造工程の途中でだけ使われ、最後に取り除かれる溶剤としての使われ方
- ② 何段階もの化学反応を経て、最終的に食品成分そのものになる原料としての使われ方
は、まったく別の話として区別する必要があります。番組が驚きとして紹介していたのは②のほうでした。
◆ なぜ誤解されやすいのか
ナフサは本来、
- プラスチック容器
- ラップ
- ペットボトル
などの“包装材の原料”として知られています。そのため、「食品にも関わっている」と聞くと、“石油を食べているの?”という誤解が生まれやすいのです。
ただ実際には、「ナフサそのものを食べている」わけでも、「ナフサが単なる裏方の道具として消えていくだけ」でもありません。石油化学から出発した長い合成の道のりの先に、香料などの食品成分がある、という理解のほうが実態に近いといえそうです。
◆ 安全性についてはどうなのか
合成バニリンをはじめ、食品に使われる香料や添加物は、食品衛生法に基づいて成分規格や使用基準が定められ、食品安全委員会によるリスク評価(許容一日摂取量の設定など)を経たうえで使用が認められています。「ナフサ由来」と聞くと不安に感じるかもしれませんが、出発点が石油化学製品かどうかと、その最終的な成分の安全性が評価されているかどうかは、別の問題として捉える必要があります。
◆ テレビ番組がきっかけで広がる興味
タモリステーションのような番組は、普段気に留めないテーマを丁寧に掘り下げてくれるので、今回のように「えっ、そうなの?」と新しい興味が湧くことがあります。
石油はエネルギーだけでなく、食品、医療、衣類、日用品など、私たちの生活のあらゆる場面に関わっています。ナフサの話題はその一例で、「石油と日本人の生活がどれほど密接なのか」を改めて考えるきっかけになりました。
◆ まとめ
- ナフサそのものが食品に混ざっているわけではないが、話は「工程で使われて消える溶剤」というだけの単純な話でもない
- 合成バニリンなど、ナフサを出発点とする石油化学製品から何段階もの合成を経て作られる食品成分は、最終製品にそのまま残ることがある
- 一方で、油脂抽出時のヘキサンのように、完成前に除去される「加工助剤」に分類される物質もあり、両者は仕組みが異なる
- 「食品にも使われている」という表現は、どちらの意味なのかによって受け取り方が変わるため、誤解を生みやすい
- 石油は生活のあらゆる場面に関わっていることを再認識できる話題
テレビ番組をきっかけに、普段見えない“食品の裏側”を少し覗くことができた気がします。